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菌根・菌根菌とは何か

オノエヤナギの外生菌根 キヌヤナギの外生菌根

 簡単に言うと、植物の根にできる植物と菌との共生体を菌根その共生体を作る菌のことを菌根菌といいます。菌根は、構造や菌と宿主植物の種類により、7つのタイプに分類されます。
ここではその中でも樹木に最も一般的にみられる外生菌根について説明します。

 外生菌根は、上の写真の様に菌糸が植物根を包み込む菌鞘を形成する為、肉眼でもその存在を確認することができます。この菌根菌が胞子を作る際に形成するのが“子実体”=皆さんよくご存知の“きのこ”になります(右図)。
外生菌根菌は、その種類5,000種〜6,000種といわれていますが、その中にはトリュフやマツタケといった食用菌も多数含まれています。

 森林内では多種多様な生物が互いに何らかの影響を及ぼしあいながら生活していますが、植物と菌類との共生体である菌根は、コケ類、シダ植物、草本や木本植物といった多くの植物で認められ、また環境変化や生育する植生の分布によってその構造は異なるものの、世界的に認められる共生関係の1つなのです。




どんな働きをするのか


 菌根の形成によって、共生菌は植物から光合成産物をもらいます。

 その見返りに共生菌は
@ 土壌中から吸収した窒素・リン酸・カリウムをはじめとする無機塩類等を根に供給する。
A 根の水分吸収力を高める。
B 病原体への抵抗力を高める。
C 毛根の寿命を延ばす
D 重金属中毒から実生を守る。
等の働きをします。



 近年の研究では菌根菌の菌糸を介したつながりによって、植物間で養分のやり取りが相互に行われていることも明らかになっていて、その働きが個体レベルにとどまらず、植物個体間・異種間にまで及ぶことが示されつつあります。

 実際に熱帯雨林などでは菌根の形成が宿主植物の生育に必要不可欠であると言う報告(Mori and Marjenah.1994;Kikuchi et al.1996)や、火山跡地におけるカラマツの実生に多数の菌根菌がついている調査結果(Guoting Yang and Joo Young Cha.1998)から、菌根菌の早期定着は実生がストレス性の高い土地に定着する上で、重要なポイントを占める可能性が示されています。




なぜ今菌根の調査・研究が必要なのか


 このように宿主である植物に対し様々な利益を与える菌根共生は、森林内生態においてかなり大きな役割を占めるということが予想されます。しかしこれら菌根の働きは、ほとんどがポット苗や苗畑において人工的に植物に定着させた菌根で示されたもので、実際の自然状況下での菌根の生態や働きを調査した研究は少ないのが現状です。

 もしも今後植林や育種に菌根の働きを利用しようと考えるのならば、菌根菌の性質の把握と適切な菌の選抜と共に、野外における土着の菌根菌に関する生態を明らかにする必要があります。

 またそれ以上に生態学的な視点から見れば、植物個体に対する働きのみならず、植物間の競争関係、ひいては群集構造や生態系機能を左右する要因として、菌根共生は今まさに世界中の生態学者の関心を集めているのです。



参考
松田陽介 (1999) モミ根系における外生菌根の群集生態学的研究.名大森研 18: 83-141
Mori and Marjenah (1994) Effect of charcoaled rice husks on the growth of Diptero carpaceae seedlings in East Kalimantan with special reference to ectomycorrhiza formation. J. Jpn. For. Soc. 76: 462-464
Kikuchi et al (1996) Effect of omycorrhiza formation on the seedling growth of several Dipterocarps in the Nursery and Fierd. In Proceedings of the seminar on ecology and reforestation of Dipterocarp forest (Suhardi I. ed.). pp. 10-16. Aditya media, Yogyakarta.
Guoting Yang and Joo Young Cha (1998) The occurrence and diversity of ectomycorrhizas of Larix kaempferi seedlings on a volcanic mountain in Japan. Mycol. res. 102 (12): 1503-1508
森茂太ら (1999) 生態系における菌根共生. 日本生態学会誌 49: 123


By M. Meguro


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